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パラダイン夫人の恋「The Paradine Case」 [不条理を描く重厚なサスペンス!!]

☆パラダイン夫人の恋「The Paradine Case」
(1947年制作、アルフレッド・ヒッチコック監督、脚本:デヴィット・O・セルズニック、ジェームズ・ブリディ、音楽:フリッツ・ワックスマン、撮影:リー・ガームス
グレゴリー・ペック、アリダ・ヴァリ、アン・トッド、ルイ・ジョールダン、チャールズ・ロートン、レオ・G・キャロル)


ヒッチコックの法廷サスペンスであり、一種の悲恋物ともなっている。
パラダイン夫人(アリダ・ヴァリ)の夫毒殺の殺人容疑を晴らそうとする弁護士キーン(グレゴリー・ペック)は、夫人の無実を勝ち取るためには、パラダイン大佐の世話係兼使用人アンドレ・ラトゥール(ルイ・ジョールダン)の犯行だと導こうとするが、最後ドンデン返しで思いが挫かれていくという物語。

ヒッチコックがアメリカへ移ってからの作品だが、舞台はロンドンで、ヒッチコックらしいひねりの利いた脚本となっている。
アリダ・ヴァリの本心の良く読めない美女というキャラクターは、名作「第三の男:The Third Man」より2年前のこの作品で既に演じられていて、ミステリアスな雰囲気を漂わている。

キーンが、パラダイン夫人に恋をしてしまうことで、同じ女性としてキーンへの愛情とパラダイン夫人への嫉妬で揺れ動く妻(アン・トッド)との夫婦間の愛情問題を殺人の謎と平行して描き、映画を盛り上げていく。

夫の眼を盗み、使用人と愛人関係となり夫を裏切りながらも、使用人のアンドレへの思いを断ち切れないパラダイン夫人の本心を見抜けないキーンは、自分の思いのままに、パラダイン夫人のためにと思い弁護をしていく。結果として、アンドレが呵責に耐えかねて自殺し、彼を愛していたパラダイン夫人の信頼を失い、恨みを買うこととなる。

ラスト15分間の法廷場面で、新事実が次々と発覚するあたりは、ヒッチコックタッチ満載で、退屈しない作品となっている。
キャスティングも見事で、検事役のレオ・G・キャロル、判事役のチャールズ・ロートンなど、一癖も二癖もある俳優達が存在感ある演技で、特にチャールズ・ロートンのしたたかな判事役は見物。
グレゴリー・ペックは、誠実で正義感に溢れるリベラルな人物というイメージで、晩年さすがに性格俳優として変貌を遂げるが、アカデミー協会会長、俳優組合会長など人望の厚い人でもあった。

代表作は数多く、「ローマの休日:Roman Holiday」「小鹿物語:The Yearling「アラバマ物語:To Kill a Mockingbird」「紳士協定:Gentleman’s Agreement」「頭上の敵機:Twelve O’clock High」「白鯨:Mody Dick」「ナヴァロンの要塞:The Guns of Navarone」「オーメン:The Omen」等々目白押しで、ハリウッドを代表する大物スターの一人である。
今作でも、誠実なあまり感情的になり過ぎる弁護士役を好演している。
ヒッチコックとは、「白い恐怖:Spellbound」でもコンビを組んでいる。
ヒッチコックの、全盛期と言われる1950年代の少し前の作品だが、十分見応えのあるサスペンスとなっている。

“毎日が映画日和” 80点

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日本の黒い夏~冤罪~ [不条理を描く重厚なサスペンス!!]

☆日本の黒い夏―冤罪―
(2000年制作、熊井啓監督・脚本、音楽:松村偵三、撮影:奥原一男、
原作:平石耕一、
中井貴一、寺尾聡、細川直美、石橋蓮司、北村和夫、加糖隆之、北村有起哉、二木てるみ、遠野凪子、根岸季衣、岩崎加根子、平田満、藤村俊二)
   
1994年6月に派生した松本サリン事件で、犯人とされた河野義行さんが、何故犯人として疑われ、マスコミに報道されたかを描いた力作。
熊井啓監督は、国内外で評価の高い監督で、監督作品は数々の賞に輝いている。

何ともやりきれない映画ではあるが、当時のマスコミの過剰報道、警察の操作手順の誤りと見込み捜査の甘さなどが暴かれていく。
社会的な事件を映画化するのを得意とする監督だけに、視点が鋭く観る者を納得させる“映画力”を感じる作品でもある。

高校生が、河野さんのドキュメンタリー番組を作る(実話)ということで、テレビ局を訪問するところから、映画はスタートするが、このテレビ局以外はどこも取材を断ったとのこと。
無責任な報道、誹謗中傷、相手を傷つける報道を“正義”や“知る権利”を盾に、自らの取材の甘さや裏付け確認の無いままの無責任な報道が横行する実態を見せつけられる。

中井貴一が、テレビ局の部長役で、マスメディアにも良心はあるんだという立場の人物像を演じているものの、結局は会社の上司との関係、スポンサーとの関係等で悩まされる。
警察の刑事を演ずる石橋蓮司も、嘘の証言で追い込もうとしたり、架空の目撃証言等で追いこむが確証が得られず、最後は犯人ではないと思うのだが、上司の面子の問題に、やはり悩まされることになる。

結果は、地下鉄サリン事件の首謀者たちが、松本での犯行を認めたことで、河野さんの無実は証明されるのだが、マスコミ、世論、警察の恐ろしさをあらためて思い知らされる映画である。
日本の警察は、自白主義で、取調室の可視化が全面的に行われていないが、欧米諸国からはそういう意味では、遅れていると言わざる負えないだろう。

人権を守るという立場からも、一刻も早く敏調べ室の可視化は、実施されてしかるべきだろう。2時間の参考人のはずが、7時間に及ぶなど、何か事故でも起こったら、どこが責任をとるのだろうか。
熊井啓監督晩年の力作である。

“毎日が映画日和” 75点


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復讐するは我にあり [不条理を描く重厚なサスペンス!!]

☆復讐するは我にあり
(1979年製作 今村昌平監督 脚本:馬場当、池端俊策、音楽:池部晋一郎、撮影:姫田真佐久、原作:佐木隆三   緒方拳、三国連太郎、小川真由美、倍賞美津子、清川虹子、ミヤコ蝶々、フランキー堺、北村和夫、根岸とし江、火野正平、絵沢萌子、河原崎長一郎、菅井きん、加藤嘉)
     
ズドンと腹に響く重量級のパンチの様な映画。実在の殺人事件を小説にした佐木隆三の直木賞作品をカンヌ映画祭で、パルムドールを2受賞している作家で、国内の評価はもとより、海外での評価の高い監督でもある、マーテイン・スコセッシ監督は心酔していたとのこと。

映画は、実際の事件とほぼ同じ出来事を描かきながらも、かなりの脚色がされている。
その手口は、大胆で堂々としていて、中々見破ることは難しかったのだろう。巧妙な手口で相手を信用させては詐欺を働き、時には人を殺して金を手に入れるという手口で、結局5人殺している。
父親との確執や妻とのエピソード、母親の異常とも思える愛情がどこまで事実なのかは知る由もないが、映画としてはドラマを盛り上げる。

出演者の役に掛ける熱い思いが伝わり、熱気が凄まじい。特に男と女の情交シーン(SEXシーン)のねちっこさは、他の監督ではあまり見られない場面となっている。三国連太郎は、相変わらずうまい演技を見せるが、それ以上に緒方拳の迫力が凄い。今村組の常連2人(倍賞美津子、北村和夫)が、身体を張った演技を見せる。

倍賞美津子は日本的な女性の原型をとどめている菩薩様ような、豊満な肉体を惜しげもなく晒し大熱演。
北村和夫も、小金持ちの小狡い親父を演じていて上手い。殿山泰氏は、死ぬまで今村作品に出演しており、この映画でも冒頭殺される運転手の一人を演じている。
小川真由美が、夢の無い連れ込み宿の女将を演じて秀逸である。雰囲気作りが上手い女優で、素直に信じていく女心を演じて見せる。清川虹子も今村組の常連だが、刑務所帰りの母親役でベテランの味わい。

この映画は、途中からサスペンス映画としてとてつもなく、面白くなって行く。
果たしてどうして捕まるのかという問題であるが、(実際は熊本県玉名市の教戒師宅を訪問した際、小学生の少女に見破られ、通報されたうえで逮捕されている。)映画では、浜松の旅館に宿泊した際呼んだステッキガールの子に通報され、捕まることとなる。実に78日間の逃走劇だったとのことで、北海道まで足を伸ばしている。

映画は、父親と嫁のカトリック故の愛情問題や、滞在する旅館の女将を巡る若いツバメや愛人のエピソードなどを、厚みのある演出で見せる。
久しぶりに観る日本映画を代表する、名実ともに2時間20分の大作である。

“毎日が映画日和” 95点

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ファーゴ「Fargo」 [不条理を描く重厚なサスペンス!!]

☆ファーゴ「Fargo」
(1996年製作 ジョエル・コーエン監督 脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン、音楽:カーター・パーウェル、撮影:ロジャー・ディ―キンス  フランシス・マクドーマンド、ウィリアム・H・メーシー、スティーブ・プシェミ、ピーター・ストーメア、クリステン・ルドルード、ハーブ・プレステル、ジョン・キャロル・リンチ)

コーエン兄弟作品の中では、2007年の「ノーカントリー」と並ぶ代表作となっていて、アカデミー賞主演女優賞、脚本賞を受賞している。

狂言誘拐事件が、計画とは違い全く予期せぬ展開となって行く。
自分の力ではどうにもならない事柄が次々と起こり、最終的には自滅していく様を、どぎつい描写、過激な描写なども取り入れながら描いていく不条理なサスペンス。解決する警察署長が妊娠10ヶ月目という意表を突く設定で、この当たりもコーエン兄弟独特の感性を感じさせる。
   
自動車販売会社重役のジェリーが、妻の父親の金を狙い、妻を誘拐する狂言強盗を実行するが、依頼した2人のヤクザ物が予定とは違い警官を殺し、目撃者も殺害、警察の捜査の中で徐々にジェリーの身辺に警察の手が迫ってくるという予定外の出来事が派生する、最終的には、父親も殺害され、妻も殺害され、犯人の一人も死んでしまうという展開。
逃亡を企てるジェリーもとうとう御用となる。脚本がしっかりしているので、展開が非常に面白いのだが、人が殺され過ぎるのが難点。

主演のフランシスは、ジョエル・コーエンの奥様で、コーエン兄弟作品には、多数出演、アカデミー賞ノミネート4回、受賞1回の実力派である。
どこかおっとりしているが、有力情報をきちんと洗い出すしっかり者の役で、さすがの演技。
ウィリアム・H・メーシーはさまざまな映画やテレビで活躍する名脇役で、この映画では主役で誘拐の立案者を演じている。特徴的な顔立ちが、一度見たら忘れられない俳優で計画と違い予期せぬ事柄が次々と起こることにおろおろする様など、自立できない弱々しい役柄がぴったりである。悪人を演ずる2人の個性が超強烈で、大熱演、俳優2人(スティーブ・ブシェミ、ピーター・ストーメア)に拍手喝采である。

コーエン兄弟は、初期のころは、脚本を2人で担当し、監督をジョエル、製作をイーサンというタイトルロール記載がほとんどだが最近は併記となっている。実際は両者が担当しているということであろう。

ヒット作というよりは、ちょっと捻りの利いた一般受けしない兄弟映画作家というイメージだったが、「レディーキラー」あたりからは興行的にも成功を納めるようになり、「勇気ある追跡」のリメイク版「トゥルー・グリッド」などは知名度抜群の俳優を起用し、作品的にも大成功を納めている。食わず嫌いのところがあったので、コーエン兄弟の未見映画もこれから見て行きたい。

“毎日が映画日和” 85点

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ミスティック・リバー(クリント・イーストウッド監督)「Mystic River」 [不条理を描く重厚なサスペンス!!]

☆ミスティック・リバー「Mystic River」
(2003年製作 クリント・イーストウッド監督、脚本:ブライアン・ヘルゲランド、撮影:トム・スターン
音楽:クリント・イーストウッド、原作:デニス・ルヘイン
ショーン・ペン、ティム・ロビンソン、ケヴィン・ベーコン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ローラ・リニ―,ローレンス・フィッシュバーン、イーライ・ウォラック、エミー・ロッサム、トム・グイリー)



今年85歳を迎えるイーストウッドのバイタリティは、どこからくるのか。
5人の女性の存在と7人の子供、カーメル市の市長も務め、1959年からスタートしたテレビ「ローハイド:Rawhide」のロディ役を1965年まで演じた。

1964年の「荒野の用心棒:A Fistful of Dollars」で、イタリアへ招かれセルジオ・レオーネと出会う、その後「夕陽のガンマン:For a Few Dollars More」「続・夕陽のガンマン:The Good,The Bad,The Ugly」で、さらなる注目を浴び、アメリカ復帰で師と仰ぐドン・シーゲルと出会う。「マンハッタン無宿:Coogan's Bluff」「真昼の死闘:Two Mules for Sister Sara」「白い肌の異常な夜:The Beguiled」とたて続けにコンビ作品を発表し、クリントの初監督作品「恐怖のメロディ:Play Misty for Me」を翌年発表、ドン・シーゲルは、バーテンダーで出演し、監督イーストウッドのサポートもした。

そして2人の記念碑的作品「ダーティー・ハリー:Dirty Harry」(1971年)が誕生する。イーストウッドは売れっ子俳優となり、世界的大スターとして駆け上って行く。ドン・シーゲルとは「アルカトラズの脱出:Escape from Alcatraz」(1979年)まで5作品でコンビを組んだが、この作品が最後となった。

イーストウッドは、その後多くの出演作品と監督作品を発表し、昨年も「ジャージー・ボーイズ:Jersey Boys」「アメリカン・スナイパー:American Sniper」を発表し、「アメリカン・スナイパー」はアカデミー賞初め賞レースを賑わせ、アメリカ国内で、3億ドルを超える興行収入を挙げている。

「ミスティック・リバー」は、2003年度の作品で、イーストウッドは製作・監督・音楽を担当し、アカデミー賞6部門でノミネート、主演男優賞(ショーン・ペン)、助演男優賞(ティム・ロビンス)を受賞した。
子供時代の遊び仲間3人の25年後の再会に端を発する不条理な世界を描く。
刑務所帰りで雑貨店を営むジミー(ショーン・ペン)、3人家族で静かに暮らすデイブ(ティム・ロビンス)、刑事となったショーン(ケヴィン・ベーコン)が、ジミーの娘の殺人事件をめぐって繰り広げる重厚なサスペンス映画となっている。

3人のそれぞれの家族を描き、家族愛、相互信頼がテーマともなっている。ジミーの娘ケイトが殺されたことで、復讐に燃えるジミーが、25年前の誘拐事件で性的虐待を受けたことから離ればなれになっていたショーンとデイブとの間で、嘘と疑惑が交錯し、デイブの妻の一言から、思わぬ結末となって終う不条理な世界を描いている。

ジミーがデイブを犯人と思い殺してしまう、その頃、ショーンは、真犯人を逮捕する。
不条理な世界、運命のいたずら、そんな世界をイーストウッドは、淡々とした語り口で描いていく。
一瞬たりとも目の離せない緊張感溢れる映画で、ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコンが演技の火花を散らし、それぞれに見応え十分である。

イーライ・ウォラックが、恐らく「続・夕陽のガンマン」(1966年)以来、イーストウッド映画での再会だと思うが、ウォラックのファンということもあり、共演者へのリスペクトが感じられる。ショーン・ペーンの妻役ローラー・リニ―は「目撃:Absolute Power」で、イーストウッドの娘役を演じていた。
撮影のトム・スターンは、「ブラッド・ワーク:Blood Work」以来のイーストウッド作品の撮影を手懸け、編集者ジョエル・コックスは、イーストウッド作品には、30作以上携わっていて、いわゆるイーストウッド組が集結している。信頼できるスタッフと実力ある俳優陣が噛み合った映画で、必見!!
最後、パレードで息子へ手を振るデイブの妻(マーシャ・ゲイ・ハーデン)の表情が切ない。

”毎日が映画日和” 90点

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