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金環食 [山本監督の重厚なポリティカルサスペンス!]

☆金環食
(1975年製作 山本薩夫監督、脚本:田坂啓、撮影:小林節雄、音楽:佐藤勝、原作:石川達三
宇野重吉、三国連太郎、仲代達矢、中村玉緒、京マチ子、高橋悦史、西村晃、安田道代、根上淳、神山繁、高城淳一、峰岸徹、夏純子、長谷川待子、北村和夫、中谷一郎、山本学、永井智雄、内藤武敏、吉田義夫、川崎あかね、久米明、】加藤嘉、神田隆)
       
九頭竜川ダム汚職事件をモデルとした、作家石川達三の小説映画化。山本監督は1960年代以降「忍びの者」「白い巨塔」「戦争と人間」「華麗なる一族」「不毛地帯」「ああ野麦峠」などの話題作、ヒット作で知られる巨匠で、力作・傑作と言われる未見の映画も多いので是非観てみたい。

映画は、金融業を営む政治の闇の部分にも精通している石原参吉をナビゲーターとして、物語は進んでいく。派閥争いによる総裁選挙で、時の官房長官から秘密裏に資金の用立てを頼まれることから、ダム建設に絡む汚職事件の全容を暴こうとする参吉と政府民生党のもみ消し工作をサスペンスフルに描く。
(先般の大臣の辞任問題などを見ていると、政治家と財界の繋がりは、何も変わらず相変わらず斡旋利得という言葉が、堂々とまかり通っていることが透けて見える。欲と色だけは、人類から消えることはないのだろう)

政界と財界(建設業界)との癒着、官僚の暗躍など権力者達の金への執着が描かれていく。
政治家が誕生した時から国内外問わず存在する問題で、またかという感じだが、宇野重吉と三国連太郎の怪演とも呼べる熱演で面白い映画となった。

原作があるので、致し方ないのだが観客がスカッとする結末として欲しかった。暴こうとするジャーナリストが殺され、小間使いの官僚も殺され、石原参吉も脱税で逮捕されるという結末では、この手の映画のパターンを踏襲するもので、政治と財界の癒着の実態は、こうなのだよと言われても、ああそうですかで観終わるのでは面白く無い。

ここは、三国連太郎演ずる神谷議員に、溜飲が下がる様な追及をしてほしかった。それにしても、役作りが凄すぎる。三国連太郎を観るだけでも価値ある映画である。多くの出演者には実在のモデルがいるとのこと。

“毎日が映画日和” 90点

座頭市(勝新太郎 最終作) [座頭市映画の集大成]

☆座頭市(1989年)
(1989年製作 勝新太郎監督、脚本:勝新太郎、中村努、市山達巳、中岡京平、撮影:長沼六男、音楽:渡辺敬之、原作:子母沢寛
勝新太郎、樋口可南子、蟹江敬三、内田裕也、陣内孝則 三木のり平、緒方拳、片岡鶴太郎、多々良純、川谷拓三、梅津栄、江幡高志、安岡力也、ジョー山中
奥村雄大)
     
勝新太郎座頭市の集大成ともいえる映画で、勝新太郎の溢れる才能とサービス精神が満載の映画。さまざまな困難を乗り越えて制作されたいわくつきの作品で、話題も豊富でヒットした映画である。

斬りまくり、殺しまくる座頭市の凄さが際だっているが、内田裕也の殺戮シーンはちょっとやり過ぎの感すらする。
豪華な配役も見応え十分で、勝新時代劇の常連蟹江敬三も出演している。緒方拳が凄腕の剣客役で助演すれば、樋口可南子(出演時31歳)が菩薩のおはんという女親分を演じていて艶っぽく、すこぶるカッコ良い。風呂場での座頭市との濡れ場は(恐らく座頭市自らラブシーンを演ずるというのは)初めてではないだろうか。

ストーリーは、いつものパターンだが勝新太郎は、高倉健との共演作「無宿」
でもそうだが、情感溢れるシーンが得意の様に思える。
映画の申し子のような俳優だけに、天性のセンスが生かされていて、シーンを繫ぎ合わせているだけのようなのだが、見事に作品として成り立っている。
荒れる海辺の知人の家(三木のり平)のシーンや風呂場での濡れ場のシーン、子供たちと過ごすさまざまなシーンなど、極めつけはラストの緒方拳との一騎打ちなど、モノトーンっぽい画調で描かれ勝新太郎という人はロマンチストなのだということが、良く分る。

映画勝新の座頭市は、大映で26作品+本作、そしてテレビでは、全100話が製作されている。全ては観ていないが、是非全作品を再見したい。
勝新太郎の息子(奥村雄大)が、ヤクザの親分五右衛門役を演ずるが、滑舌がはっきりしないこともあるが、役不足で凄味がない。ここはベテラン俳優で座頭市に貫録負けしない俳優が演ずるべきだったのではないか。
陣内孝則や内田裕也が、熱演していて内田裕也の存在感は意外な驚き、多々良純や江幡高志なども好演。

ラストの立ち回りのセットは、かなり大掛かりで見応えも十分、成功作といっていい。この映画の8年後に勝新太郎は亡くなるのだが、奔放な性格で損をした天才肌の名優であろう。「兵隊やくざ」「悪名」シリーズそして、この座頭市シリーズと日本の映画界に一時代を築いた俳優でもある。

“毎日が映画日和” 90点(樋口可南子に10点おまけ)

ニュー・シネマ・パラダイス「「Nuovo Cinema Paradiso」 [珠玉の名作]

☆ニュー・シネマ・パラダイス「Nuovo Cinema Paradiso」(完全版)
(1988年製作 ジュゼッペ・トルトナーレ監督・監督、音楽:エンニオ・モリコーネ、撮影:プラスコ・ジュラ―ト、製作:フランコ・クリスタルディ
フィリップ・ノワレ、ジャック・ぺラン、サルヴァトーレ・カシオ(少年)
マルコ・レオナルディ(青年期)、アニェーゼ・ナーノ(若年期)、ブリジット・フォセー、アントネラ・アッティーリ、プペラ・マッジオ、エンツォ・カナヴェイル(支配人)イサ・ダニエリ(アルフレード奥さん)レオポルド・トリエステ(司祭)、レオ・グロッタ(案内人))
     
大好きな映画で、アルフレード(フィリップ・ノワレ)のトトへの父親の様な愛情が何度見ても泣ける映画です。
トルトナーレ監督32歳の作品。生まれ故郷への郷愁と映画への思いが一杯詰まった素敵な映画。
トルトナーレ監督は、映画に描かれる時代背景より少し後の世代だが、幼少期から子供のころそして青年期と似た様な環境で育った体験の多くを映画に込めたと言われている。

映画館に多くの観客がいた時代を懐かしむような映画愛溢れるこの映画は、アカデミー賞外国語映画賞初め数多くの賞を受賞している。
日本では、シネスイッチ銀座で1989年12月から公開され40週という長期の上映となった。この映画を最初に観たのは、シネスイッチ銀座だったことを思いだす。

映画館に通いつめ、アルフレードに怒られながらも映写技師の技術を習得していく幼少期は、ほのぼのとアルフレードとトトの交流を描いて行く。マリアとの悲恋を描く青年期は、成長していくトトへの父親に似た愛情を注ぐアルフレードとの交流を描く。後半は、アルフレードの訃報を聞き故郷に戻ったトト(ローマで映画監督として大成功している)が、今は結婚しているマリアと再会し、断ち切れない思いを伝え、すれ違いの理由を知ることとなる。

アルフレードの形見を手にローマに戻ったトトは、幼少期教会教区映画としての上映だったためカットされた映画のキスシーン(アルフレードがトトへあげると約束していた)だけを編集した形見のフィルムを観て、アルフレードのトトへの深い愛情を再認識するという物語。通常上映版は、マリアとの再会の部分がカットされた短縮版で、世界中で評価の高いバージョン。

今回観た完全版は、運命の皮肉も描きつつ母親やアルフレードのトトへの深い愛情をトトが再確認するバージョンとなっていて175分の長尺版。
イタリア映画で、架空の村の物語、撮影の大半はシチリアのパラッツォ・アドリアーノ村で行われ多くの住民がエキストラで出演しているとのこと。

ニュー・シネマ・パラダイス座は、広場にセットで建てたもので、映画館の内部は教会を改装したもので、当時の雰囲気をうまく出している。またラスト、ローマの会社でトトが、形見のフィルムを観る時の映写技師にはトルトナーレ監督が扮している。幼少期を演じたトトは、今はスーパーマーケットのオーナーとのこと。映画の中に登場する多くの映画は、44本で(ポスターも含め)
・どん底 ・駅馬車 ・揺れる大地 ・チャップリンの拳闘 ・無法者の掟
・にがい米 ・白い酋長 ・ジキル博士とハイド氏 ・風と共に去りぬ 
・ヴィッジュの消防士たち ・アンナ ・絆 ・素直な悪女 
・略奪された七人の花嫁 ・青春群像 ・貧しいが美しい男たち・ユリシーズ
・さすらい ・嘆きの天使 ・街の灯 ・激怒 ・白雪姫 ・カサブランカ
・戦場よさらば ・ロビンフッドの冒険 ・素晴らしき哉、人生! 
・ベリッシマ ・夏の嵐 ・マンボ ・ヨーロッパ1951年 ・ウンベルトD
・サリヴァンの旅 ・越境者 ・ならず者 ・黄金狂時代 ・熱砂の舞 
・ノックアウト ・ナポリの黄金 ・ローマの休日 ・ヒズガールフライデー 
・美女と野獣 ・玩具の国 ・底抜け極楽大騒動 ・丘の羊飼い
以上である。

トトが、アルフレードや家族の元から、列車で旅立つシーンにかぶせて、葬儀に駆けつけるため飛行機が着陸するシーンなどの演出が切なくて堪らない。
映画館に入れない人たちへの思いやり溢れるシーン(アルフレードが光を失う場面)、野外映画のシーンなどの雰囲気が素晴らしい。感性豊かな監督で、ラストのキスシーンのフィルムの場面など何度観ても涙が溢れる名シーンである。

映画館のボヤのシーンなどは、実際の当時の映写技師達の話からヒントを得ているとのこと。多くの経験と体験がこの映画に詰まっており、忘れられない名画となっている。生涯にそんなに出会えない名作の1本である。
    
“毎日が映画日和” 文句ない100点!

女相続人「The Heiress」 [人生ドラマの傑作!!]

☆女相続人「The Heiress」
(1949年製作 ウィリアム・ワイラー監督、脚本:ルース・ゲーツ、オーガスタ・ゲーツ、撮影:レオ・トーヴァ―、音楽:アーロン・コープランド
オリヴィア・デ・ハヴィランド、モンゴメリー・クリフト、ラルフ・リチャードソン、ミリアム・ホプキンス)
      
ヘンリー・ジェィムズ原作の「ワシントン広場」の映画化で、第22回アカデミー賞作品賞他8部門ノミネートされ、主演女優賞、音楽賞、美術監督賞(白黒部門)、衣装デザイン賞(白黒部門)4部門受賞した作品。

ニューヨークの医師の娘キャサリン(オリヴィア・デ・ハヴィランド)とモーリス(モンゴメリー・クリフト)の悲恋と二人の結婚に反対する厳格な父親を描いた物語。
ウィリアム・ワイラー監督は、アカデミー監督賞ノミネート12回受賞3回の大監督で、「ベン・ハー」「ローマの休日」は映画ファンでなくても知っている名作中の名作である。
名作・傑作が多く「孔雀夫人」「西部の男」「ミニヴァ―夫人」「我等の生涯の最良の年」「探偵物語」「必死の逃亡者」「友情ある説得」「大いなる西部」「噂の二人」「コレクター」「おしゃれ泥棒」「ファニーガール」など映画界の生んだ不世出の大巨匠と本当に呼べる監督である。

主人公の女性のうぶな表情が、最後には冷たい人を寄せ付けない表情と変わるあたりの演出が凄い。登場人物一人一人の性格が明確で、わかり易くそれぞれの演技に品格を感じる。特にラルフ・リチャードソンの役作りが、素晴らしい。ロンドンの舞台で活躍したとのことで、(親友にはローレンス・オリヴィエがいるとのこと)その実力が如何なく発揮されている。それにしてもモンゴメリー・クリフトは、ウォーレン・ベイティと雰囲気がそっくりで、金持ちの女性を選び近づくが、覚悟が足りない男を演じている。

オリヴィア・デ・ハヴィランドは、徹底した役作りをしたと思われる大熱演で、父親を拒否し、最愛の男への裏切りに精神的に復讐する女性を演じて秀逸である。見事2度目のアカデミー賞主演女優賞を受賞している。「風と共に去りぬ」のメラニー役は燦然と輝き後の世まで永遠に語り継がれる女性像となっている。

劇中流れる音楽は良く聞くメロディで(題名は知らない)、耳に残る。
舞台劇でも有名とのことで、正に重厚な舞台劇をそのまま映画にしたような雰囲気。
“毎日が映画日和” 85点

怒りの河「Bend of the River」 [クラシック・ウエスタンを楽しもう!]

☆怒りの河「Bend of the River」
(1951年製作 アンソニー・マン監督 脚本:ボーデン・チェイス、撮影:アーヴィング・グラスバーグ、音楽:ハンス・J・サルター 原作:ビル・ガリック  ジェームズスチュアート、アーサー・ケネディ、ジェイ・C・フリッペン、ジュリー・アダムス、ロック・ハドソン、ロリー・ネルソン、チャピー・ジョンソン)
     
アンソニ・―マン監督とジェームズ・スチュアート主演コンビの作品は、「ウィンチェスター銃`73」「裸の拍車」「遠い国」「ララミーから来た男」と5本の西部劇があり、(他に「雷鳴の湾」「グレン・ミラー物語」「空軍戦略指令」)名コンビとして知られる。善良な正義の人を演ずる役の多かったスチュワートの個性をうまく引出した佳作・名作が多い。(42歳から47歳まで)

「怒りの河」は「ウィンチェスター銃‘73」に次ぐコンビ2作目で、かつては無法者として絞首刑の傷跡を持つマクリントックが、ポートランドの奥地へ移住する開拓団へ食料を届けるための苦難を描く。
一度過ちを犯した人間の再生と信頼の物語ともなっている。
敵役は、コール(アーサー・ケネディ)で開拓団の隊長ジェレミー(ジェイ・C・フリッペン)の娘(ジュリー・アダムス)の揺れる心も描かれる。

開墾する開拓団へ購入した食料が届かないことで、ポートランドを1年ぶりに訪れたマクリントックは、砂金に湧く町に驚き購入した食料が砂金堀の人達へ横流しされるのを防ぐため、射ち合いの末、蒸気船の船長の助けで脱出する。
開拓団の元へ食料を届ける途中、コールの裏切りで窮地に立つが執念の追撃でコールを倒し開拓団のもとへ食料を届ける。沢山のエピソードが盛り込まれた脚本だが、アンソニー・マン監督は解りやすく整理されたメリハリのある演出で楽しませてくれる。

新人の頃のロック・ハドソンが賭博師役を演じ、デビュー3年目のジュリ-・アダムスなどが活躍する。(ジュリ-・アダムスは、映画テレビで長く活躍している女優で、88歳で今でも健在である。)
隊長役のジェイ・C・フリッペンや船長役のチャピー・ジョンソンが脇を固める。
アーサー・ケネディが、準主演で悪役を演じていて映画が締まった。
ジェームズ・スチュアートの熱血漢ぶりが伝わる映画で、開拓団の様子も描かれ91分の長さも手頃。

“毎日が映画日和” 70点

告白「The Confessions」 [渋~い俳優達の佳作!]

☆告白「True Confessions」
(1981年制作 ウール・グロスバード監督、脚本:ジョン・グレゴリー・ダン、ジョーン・ディディオン、撮影:オーウェン・ロイズマン、音楽:ジョルジョ・ドルリュー  ロバート・デ・ニーロ、ロバート・デュバル、チャールズ・ダーニング、バージェス・メレディス、ローズ・グレゴリオ、ケネス・マクミラン、シリル・キューザック)
       
ロバート・デ・ニーロとロバート・デュバルが、共演したサスペンス映画
兄の刑事(デュバル)、司祭の弟(デ・ニーロ)が、1962年砂漠の教会で久しぶりに再会するシーンからスタートする。事件の舞台は、1948年、若き司祭のデズモンド(デ・ニーロ)が、枢機卿の意向を組んで、建設業界の大物ジャックの援助を目的に、様々な事業に影響力を及ぼしている。

娼婦の館で司祭が死に、その後若い娼婦が殺される。娼婦殺人の犯人を追いかける兄トムの捜索は、過去に因縁のあるジャック(チャールズ・ダーニング)へと向かって行くが、町の名士であり協会の後ろ盾でもあるジャックへの捜索は協会にとっても諸刃の剣で枢機卿はあまり協力的ではない。

ブルー・フィルムの撮影者が容疑者に浮かび、その撮影現場が殺害場所とわかり、協会が絡んでいることがわかるとデズモンドは閑職へと追いやられ砂漠の司祭となっているという物語。

久しぶりの再会で、弟は兄へ思いあがっていたこと、神から遠ざかっていたこと、事件がきっかけで本来の自分に戻れたことを感謝する。やすらかな顔で心臓が悪く余命いくばくもないことを告白する弟と兄の姿があった。すでに購入している墓地を案内する場面でフェードアウトとなる。

冒頭の司祭の死とか新たな商業エリアの開発など余計なエピソードが多く、俳優が熱演していただけにもったいない。演出が空回りしたような感じで、「ストレートタイム」「恋に落ちて」を監督したウール・グロスバードだけに残念。
チャールズ・ダーニングやバージェス・メレディス、ローズ・グレゴリオが好演。ローズ・グレゴリオが、自殺する理由も良く分らいが、「さよならを言える相手がいて良かった」とのセリフは、なかなか良いセリフだった。

“毎日が映画日和”70点

バリー・リンドン「Barry Lyndon」 [時には芸術でも!!]

☆バリー・リンドン「Barry Lyndon」
(1975年制作 スタンリー・キューブリック監督、脚本:スタンリー・キューブリック、撮影:ジョン・オルコット、音楽:レナード・ローゼンマン、
原作:ウィリアム・メイクピース・サッカレー
ライアン・オニール、マリサ・ベレンスン、ハーディー・クリューガー、パトリック・マギー)
    
3時間を超えるスタンリー・キューブリック監督の超大作。
18世紀半ばにアイルランドの農家に生まれたレドモンド・バリーが、紆余曲折を経て、片足を切断しイギリスを追われるまでを描いている。
アカデミー賞撮影賞、美術賞、音楽賞、衣装デザイン賞を受賞、作品賞、監督賞、脚色賞にノミネートされている。

惜しむらくは、ライアン・オニールに魅力がないことと、上映時間が長すぎたことか。
第1部は、親戚のノラに横恋慕したバリーが、村を追いだされ、兵役に付き七年戦争に従軍するが嫌気がさし、将校になりすましアイルランドへ戻ろうとする途中、プロイセンの将校に見破られ、プロイセン軍で従軍。その将校を助けたことで軍隊を脱出、警察のスパイとして働くが、国外退去しギャンブルで食いつなぐ中でレディ-・リンドンに出会い、夫が亡くなると1年後に結婚しバリー・リンドンとなるまでが描かれる。

第2部は、爵位を受けようとさまざまな方面に働きかけるため資産を食いつぶすが、義理の息子との確執から周りの支援を得ることが難しくなり、実の息子を失った悲しみもあり、義理の息子と決闘の末、結局片足を失いレディ・リンドンには会うこともなく、母と共にイギリスを去って行く。

波乱万丈の人生の軌跡を綴る映画だが、時代設定に合せた衣装や美術、ロケ地の舞台設定などが素晴らしい。蝋燭の炎だけで撮影したという室内シーンは、その時代にいる様な雰囲気にさせ、とても蝋燭の炎だけとは思えない画像を見せる。衣装も見事で、女優陣の衣裳だけでなく男優陣の衣裳も徹底してリサーチされていることがよくわかる。

レディ・リンドン役のマリサ・ベレンソンの美しさが際だっているが、モデル出身だけあって、見事な美貌とスタイルである。ハーディー・クリューガーが、プロイセンの将校役を貫録十分に演じて、健在ぶりを見せている。
スタンリー・キューブリック監督は作品が少なく、「博士の異常な異常」「2001年宇宙の旅」「時計仕掛けのオレンジ」「シャイニング」「フルメタル・ジャケット」「スパルタカス」などは映画史に残る作品として評価が高い。

“毎日が映画日和” 80点


モナリザ「Mona Lisa」 [チンピラヤクザの夢物語]

☆モナリザ「Mona Lisa
(1986年制作 ニール・ジョーダン監督、脚本:ニール・ジョーダン、デヴィッド・リーランド、撮影:ロジャー・ブラッド、音楽:マイケル・ケイメン 主題歌:ナット・キング・コール(1950年のヒット曲)
ボブ・ホスキンス、キャシー・タイソン、マイケル・ケイン、ロビー・コルトレーン、ケイㇳ・ハーディ)

監督ニール・ジョーダン初期の佳作で、刑務所帰りのチンピラ(ジョージ)を主人公とする映画
演ずるボブ・ホスキンスは、カンヌ、ゴールデングローブ賞初めさまざまな映画祭の男優賞を獲得した。
        
旧友トーマスを演ずるロビー・コルトレーンは、「ハリー・ポッター」シリーズのハグリッド役で有名で、007「ゴールデン・アイ」と「ワールド・イズ・ノット・イナフ」にもズコフスキーという役で出演している。

高級コールガールシモーヌ(キャシー・タイソン)の運転手の仕事をする内に、ほのかな恋心を抱くが、シモーヌにキャシーという娼婦仲間を探してほしいと頼まれたジョージは、期待に応えようと組織を裏切ってまで尽くすのだが、シモーヌは、組織の親分(マイケル・ケイン)を殺害してしまう。

ジョージは利用されていたことを悟り、旧友トーマスの元で、娘に会うというストーリー。
ボブ・ホスキンスが人の良い冴えない中年のチンピラ役を、細かな役作りで演じている。
服装などいかにもチンピラ風で笑える。
「ヘンダーソン夫人の贈り物」の支配人役も忘れ難い俳優だが、昨年4月71歳で亡くなっている。合掌!

シモーヌ役のキャシー・タイソンが、すらりとした黒人美人で魅力的。あまり映画出演はなく、(「レイ・オフ」「司祭」「ゾンビ伝説」「傷だらけの報復」)未公開作品が多いのだが、モナリザ出演時は20歳とのこと(1995年出演の「傷だらけの報復」29歳以後出演作品履歴がない)

ニール・ジョーダンは、最近テレビドラマ「ボルジア家」の制作・監督を務めている。
「マイケル・コリンズ」の力強い演出が記憶に残るが、「クライングゲーム」「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」等評価の高い作品も多い。

“毎日が映画日和” 75点

日の名残り「The Remains of the Day」 [人生ドラマの傑作]

☆日の名残り「The Remains of the Day」
(1993年制作 ジェームズ・アイボリー監督、脚本:ルース・フラワー・ジャブバーラ、ハロルド・ピンター、音楽:リチャード・ロビンス、撮影:トニー・ピアース=ロバーツ、原作:カズオ・イシグロ
アンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソン、クリストファー・リーブ、ジェームズ・フォックス、ヒュー・グラント、ピーター・ヴォ―ガン、マイケル・ロンズデール)
   
イギリスの貴族ダーリントン卿(ジェームズ・フォックス)に仕える執事スティーブンス(アンソニー・ホプキンス)の物語。

1930年代の第2次世界大戦前、第1次世界大戦で敗れたドイツと友好関係を深め融和主義を唱える主人ダーリントン卿が、政治的にドイツに利用されていく過程がダーリントンホールを取り仕切る執事スティーブンスの回想形式で綴られていく。

人手不足に悩み、父親まで駆り出すが、老齢のためお客様に失礼があってはならぬと接客係から掃除係に職変えする非情さや、思いを寄せる女中頭のケントン女史の思いを寄せ付けない職務への忠実さも見せる。 
彼の生き様を通して、第2次世界大戦前の不穏なヨーロッパの政治状況の一端と貴族の館に仕える使用人たちの世界を垣間見せる重厚なドラマ

原作は、日系イギリス人作家 石黒一雄(イシグロカズオ)の長編小説「日の名残り」で、監督は「眺めのいい部屋」「モーリス」「ハワーズ・エンド」などで一流監督の仲間入りし、最近では「上海の伯爵夫人」「最終目的地」を発表しているジェームズ・アイボリーである。

時代を感じさせる美術や衣装、邸宅内の装飾などが素晴らしい。キツネ狩りの場面など、如何にもイギリス貴族の優雅さと贅沢さを感じさせる場面となっている。アカデミー賞8部門でノミネートされた(「シンドラーのリスト」「ピアノレッスン」に阻まれた)上品な質の高さと伝統を感じさせる名作である。

先日同じく貴族の館で働く使用人たちを描いたサスペンス「ゴスフォード・パーク」を見たばかりで、視点は違うものの執事は人事、労務、日常の業務含めて邸宅の管理一切を仕切る、人並み以上の能力が要求される大変な職業だということが良く分る。常識や幅広い教養が必用とされ、またあくまでも控えめに振る舞い、出しゃばらず、この映画では、すぐ近くにいながらも、父親(ピーター・ヴォ―ガンが熱演)の死に目にも会えない過酷さも描かれている。

アンソニー・ホプキンスは、ハンニバル・レクター役でアカデミー賞を受賞したが、舞台で鍛えられた卓越した演技力はこの映画でも発揮され、本当にこのような執事がいそうだと思わせてくれる。最近は、大作映画に顔見世出演している。
エマ・トンプソンは、イギリスの産んだ名女優の一人で、数々の作品で賞に輝く実力派である。先日見た「いつか晴れた日に」でも感じたのだが、役に入り込み成りきっている。20年後再開し、魅かれ会いながらも別れていくシーンが切なかった。

ジェームズ・フォックスが、ダーリントン卿を威厳と気品ある雰囲気で演じ、映画冒頭と後半で、政治に翻弄された貴族の盛衰を見事に演じている。ヒュー・グラントが新聞記者役で出演し、マイケル・ロンズデールやクリストファー・リーブが脇を固める。必見の映画!!

“毎日が映画日和” 90点

シンシナティ・キッド「The Cincinnati Kid」 [マックィーンンを楽しもう!]

☆シンシナティ・キッド「The Cincinnati Kid」
(1965年制作 ノーマン・ジェイソン監督、脚本:リング・ラードナー・ジュニア、テリー・サザーン、撮影:フィリップ・ラスロップ、音楽:ラロ・シフリン、原作:リチャード・ジェサップ  スティーブ・マックイーン
エドワード・G・ロビンソン、カール・マルデン、アン・マーグレット、チューズディ・ウェルド、ジョーン・ブロンデル、ジャック・ウェストン、リップ・トーン、ジェフ・コーリー、キャブ・キャロウェイ)

大好きなスティーブ・マックイーンの出世作で、スタッドポーカーが得意の若手ギャンブラーを演じている。
ノーマン・ジェイソンとはこの作品の3年後、名作「華麗なる賭け」(マックイーンのセンスの良さとノーマン・ジェイソンの感性の豊かさを感じさせる“粋でおしゃれな犯罪映画の最高峰”として君臨する映画である)を発表する。ノーマン・ジェイソン監督も1962年監督デビューし、この作品は4作目となる。
    
名ギャンブラー、ザ・マンことランシー(エドワード・G・ロビンソン)に、若いギャンブラーエリック(マックィーン)が挑むものの、最後の最後に敗れてしまう映画。
世代交代は簡単ではないし、そんなに甘いものではないと教えている。

ポーカーを題材とした映画のため、ほとんどは室内撮影だが、女性との恋の行方や、カール・マルデンとの確執やアン・マーグレットとの関係なども描かれる。ベテラン俳優がそれぞれ持ち味を発揮し、緊張感ある傑作となっている。

チューズディ―・ウィルドが、エリックを待ち続ける女性像を上手く演じている。アン・マーグレットは、ギャンブラーの長老格シューターの妻を演じていて、妖艶な魅力を見せる。「華麗なる賭け」にも出演するジャック・ウェンストンが、ポーカー仲間の一人を演じている。(汗苦しい役柄は天下一品)

エドワード・G・ロビンソンが、老ギャンブラーの役で名演技を見せる、1930年代から50年代にかけて犯罪物など多くの映画で主演を務め、60年代以降は重厚な幅広い演技で、さまざまな映画に出演し脇を固めている。
カール・マルデンも幅広い役柄を演ずる俳優で、この映画でも一癖ある役柄を演じている。数々の映画で活躍し、アカデミー協会会長も努めた息の長い名優である。(97歳で死亡)

マックイーンは、シャープで精悍な魅力を存分に発揮し、彼の静かな淡々とした演技スタイルが確立された映画ではないだろうか。この映画のあと「ネバダスミス」に出演し、マックイーンの全盛時代へ入って行く。
ポーカーの駆け引きが十二分に楽しめる映画。

“毎日が映画日和”85点

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